第9話:「あ、存じてます」——覚醒した義兄との、2人だけの勉強会

みーぬ

元旦です。

おせちは、揚がってました。詰まってました。何十年目にして初めての、詰め係じゃない元旦(経緯は第6話)。

で、おせちを食べ終わると——以前のように仲の良い家族団らんの姿はいずこへ?
会話が続かない。
なんだ、なんだ この異様な空間は。
例年ならすそこ様のマシンガントークが炸裂するんだけど(まぁ 会話は近所の噂話と過去の話だけど※あったなぁ~経参照)、昨夜、到着とともにバトルを繰り広げたからか、お得意の家族ごっこを演じることができないのか、会話が続かずに時間がもたないご様子。

このままこの場所にいると、鬱モードのすそこ様の独演会モードが始まってしまう。
いつもはすそこ様のとりとめのないくだらない話に延々とタイマンで対応させられてた私だけど、もうごめんなんでね。(嫁は聞き役ボランティア
同じ空間にいる時間を極力減らして、関わりたくないのが今後の方針。

本当は私たち夫婦はゴルフのラウンド前日は練習したくないんだけど、打っている最中は1人の世界で巻き込まれずに平和なので、すそこ様を誘ってだんなちゃんと3人でゴルフ練習場へ。
ふぅ。数時間の避難に成功。

戻ったのが、お昼過ぎの2時か3時くらい。
さて、ここからどうするか。

わたしには、やっておきたいことがひとつありました。
前日に覚醒の兆しを見せた(→第8話)カツオくんと、ちゃんと話すこと。

みーぬ
みーぬ

お兄ちゃん、ちょっと勉強会をしよう! 認知症についてのお勉強

すそこ様のいない場所で。ということで、カツオくんの部屋で2人きりの勉強会です。

そしてこの勉強会で、出るわ出るわ、驚愕の真実が。

例によって、これはわたしから見た景色の記録です。

驚愕その1|彼は、動いていた

まず判明したのは、カツオくんが意外にも、ウニ男さんのケアマネさんと協力していろいろ動いていたこと。
そして、すそこ様の認知症が急激に進んでいるな、という初めて知る新事実。

「期待できない応援団」どころの話じゃない。わたしたちの知らないところで、現場はとっくに回りはじめてたんだよね。

みーぬ
みーぬ

わーーーー ごめんなさいぃぃぃぃ
知らんかった・・・
おにいちゃんがこんなに頑張って動ける人だったとは。
見くびり過ぎてました・・・ マジでごめんなさい! 反省。

ただし——最初からきれいな覚醒だったわけじゃなかったけどね

数か月前の秋頃、すそこ様の「私の知らないところで私の保有財産を担当者が勝手に動かしよった!!」という騒ぎがあって、カツオくんはその実行部隊として、相手先に抗議の電話をかけまくっていた時期があった、と…。すそこ様の言い分をまんま真に受けて、相手を最初から加害者認定して、弁護士まで立てたと。先方は当然動じずに、録音してた電話のやりとりを出そうとするも「そんなんは証拠にならん!いくらでも改ざんできるんじゃから!」と徹底抗戦して噛みついた、と。

私は、聞きながら、ドン引きしつつも(そうなんだよね。これが今までのカツオくんなのよ。世の中は敵で信じられるのは母親だけ。言いがかりをつけて自分たちの正当性を強引に主張して短絡的正義マンになってしまう・・・) だけど

それがだんだんと、「あれ? これはおかんの言うことのほうがおかしいんか? 認知症が進んでのことだったんか?」と気づきはじめていた。そこへ、あの「今は5月か?」の直撃(→第7話)。焦って仕事を休んで、病院へ——という流れだったらしい。

母親の実行部隊から、母親の観察者へ。
彼の中で、視点がひっくり返る途中だったんです。


驚愕その2|「認知症のフリをして、おれを責めてきたんよ」

そして勉強会の途中、カツオくんの口から、本音がポロリ。

義兄カツオ
義兄カツオ

おかんはな、もともと人をコントロールする人なんよ。だから、認知症のフリをして、それを使っておれを責めてきたんよ。言うことをきかそうとして。

もともとそういう人じゃけど、さすがにそれを言われたら俺も我慢できん。それを言ったら俺が言うことをきくと思って、それを言ってきたからな

…………。

え?

あなた、気づいてたの?

ここで少し説明させてください。わたしがこのブログで書き続けてきたこと——すそこ様のコントロール、支配の構造。あれをだんなちゃんに最初に話したとき、彼の反応は「そんなことはない。気のせいじゃない? おかんが悪いって言うのか?」でした。全く気づいてなければ、それが普通だと思ってた——本人が今でもそう言うくらい、家の中の人には見えないものなんです。

その、家の中で一番長く暮らしてきた長男が。
自力で、気づいてた。しかも、それをわたしに言葉にして言ってきた。

これを言ってきたということは、彼はわたしが見抜いてることに気づいてる——と瞬時に判断して、わたしはこう返しました。

みーぬ
みーぬ

あ、存じてます (^-^;💦

ちょっと笑いながら、相槌ひとつ。

それ以上は言いません。「こんなことをされた!」も、おかあさんの悪口も、一切なし。
ここはだんなちゃんのときから徹底してる、わたしの鉄の掟です。悪口は、言ったら負けだから。

10数年かけてわたしが観察・記録してきたことを、彼は彼で、あの家の中から見ていた。答え合わせは「存じてます」の五文字で十分。
家の中で横暴になったり偏屈になったりしていたのは、コントロールしてくる母親への、彼なりの抵抗だったんか——と、いろんなことが一気に繋がった瞬間でもありました。


彼が一番しんどいもの

勉強会で、カツオくんが一番しんどそうに語ったのは、意外なものでした。

すそこ様の、うつモード。

今は何かにつけてよく泣き、「私なんか」モードに沈む日が増えているらしい。普通の話をしていても、結局そこに行き着く。何かを指摘したくても、動きたくても、感情論で反発してくる。もともとの、人の話を聞かない・自分の思い通りにするという性格もあいまって、話し合いにならない。で、泣き出す。
——だからもう、「ほんまに嫌になるんよ」と。

これは笑えない話です。介護の現場で家族が一番削られるのは、実は身体介助じゃなくて、この出口のない感情の応酬だったりする。前線に立つ人間にしかわからない消耗が、彼にはもう始まってました。


「洗脳」の答え合わせ

心が開いてきたのか、カツオくんはこんなことも教えてくれました。

義兄カツオ
義兄カツオ

昨日も、2人が帰ったあとに、凄かったで。”なんでみーぬちゃんなんかにあそこまで言われにゃあかんのじゃ!!”ゆぅて。まことだけじゃのうて、俺までみーぬちゃんに洗脳された、って言ってたからな

はい、第8話の締めで書いた、あの夜の茶の間の話です。本人経由で答え合わせが来ました。

みーぬ
みーぬ

わたしも言われてるのはわかってるよ。だけど、実際にわたしは財産を乗っ取るとかの話なんて一切してないじゃん? こうなるからお兄ちゃんか第三者の後見人をつけてね、って話をしてるだけで。
もしわたしが乗っ取りとか洗脳とかを企んでるんだったら、そこで「わたしかまことくんを後見人に」って言うわけじゃん?

義兄カツオ
義兄カツオ

……確かに、そうじゃな

第8話で「後見人の候補に自分の名前を出さない」設計の話をしましたが、あれが効いたのはここです。疑われることが最初からわかってるなら、疑いようのない形で提案しておく。ロジックは疑惑への最強のワクチンです。予防はだいじっ!


「なるほどな。そういう手があったか」

勉強会では、実務の話もしました。わたしの提案の鉄則は、必ず代替案とセットで出すこと。

たとえば免許返納。すそこ様の言い訳は「お店が続けられなくなる」「ゴルフができなくなる」の2本柱なんですが——

みーぬ
みーぬ

わたしたちは誰も、お店をやめろなんて言ってない。むしろお母さんの症状が悪くならないためにも、続けてほしいと思ってる。採算度外視で、赤字になってもいいから続ける、でいい。
●●●は家の裏のスーパーで買えばいいし、たまにお兄ちゃんと市場に行けばいい。

ゴルフも、やめろとは言ってない。一緒にプレイしてる人に乗せてもらえばいいし、それが無理ならタクシーで行けばいい。自分が頑張って働いてきたお金を今使うのは、贅沢でもなんでもないと思うよ?

義兄カツオ
義兄カツオ

なるほどな。そういう手があったか

目から鱗の合いの手、連発。
そして話していて気づいたのが、この日のカツオくん、とにかく「それは俺がやる」が多いこと。

「嫁のお前がやれ」モードじゃないんです。「自分がやるしかないじゃろ?」モードなんです。

だからわたしは、あくまで情報提供者の立ち位置に徹することができたんだよね。主な介護者はお兄ちゃん。わたしは情報提供者で、だんなちゃんの補佐役。必要なときだけ——たとえばケアマネさんとすそこ様抜きで話すときとか——そこに参加する。この役割分担を、勉強会ではっきり言葉にして確認しました。彼もそのつもりのようだったから軍事同盟を結ぶわたしたち。


ヒール役、正式就任

最後に、わたしから2つ、伝えたことがあります。

ひとつめ。

みーぬ
みーぬ

わたしは、自分が悪者になる覚悟で、言わなきゃいけないことを言ってる。言いたくないよー、こんなこと。だけど、認知症って本当にやばいから。
言いたくない、情で言えない、どうせ聞いてくれないから言わない——じゃなくて、結局は言わなきゃいけないことになるの。
みんなが言いにくいこと、言わなきゃいけないことは、これからもわたしが言うよ。うまく、わたしを利用してくれればいいから

ふたつめ。これは戦術の話。

みーぬ
みーぬ

ここでお兄ちゃんがわたしの味方になっちゃうと、また「あんたまでみーぬちゃんに洗脳されて」ってなるから、お母さんの前では、そうしない方がいいと思うよ。
わたしのことを一緒に悪く言うとかして、利用すればいいと思うよ

義兄カツオ
義兄カツオ

それは、みーぬちゃんには悪いけど、そうさせてもらってる

もう、やってた。
正解です。満点の回答です。

おかしな構図ですよ。悪口を言われてる本人が「わたしを悪者にして使ってね」と頼んで、相手が「悪いけど、もうしてる」と答えて、それで信頼関係が深まるという。
でも、これがあの家を動かすための、いちばん現実的な布陣なんです。おかあさんの悪口を言い続ける人と、悪口を言われながら誰もやりたがらないヒール役を買って出る人。どちらを信頼するかは、時間が証明してくれる。

勉強会、閉会。
この元旦、あの家の布陣が正式に決まりました。前線代表・カツオくん。防波堤兼ヒール役・わたし。連絡窓口・だんなちゃん。

——で、この布陣が本物だったかどうか。

それは半年後の7月、カツオくんから届いた一通のLINEが証明してくれることになります。
件名も前置きもなく、たった一行。

その中身は、次回。

(つづく)

ABOUT ME
みーぬ
みーぬ
観察系記録ライター
義母との複雑な関係をきっかけに、 “家庭”という名の舞台に仕込まれた違和感を見逃さず、 観察・分析・記録を始めました。 このブログでは、 心を守るための言葉を綴っています。 最初は、誰にも言えない気持ちの吐き出し。 でも、記録しながら自分の感覚を取り戻し、 今は“自分で自分を守れる言葉”を紡いでいます。 私にとって「書くこと」は、 日々のズレや不安から自分を切り離す、小さなサバイバル術です

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