ついに、舅ウニ男さんが免許を返納した。——元タクシー運転手が手放すまでの長い道のり
舅ウニ男さんが、免許をついに返納しました。.゜(ㅍдㅍ。)゜.
第11話(→こちら)で書いたとおり、事務連絡に埋まった、義兄カツオくんによるたった一行の報告で知らされた「親父は免許返納済み。」——ドヤ顔もなく、武勇伝もなく、しれっと知らされた嬉しすぎる朗報。
カツオくんの報告はそっけないものだったけど、多分ウニ男さん自身は、自分で自慢げに言いたかったのかも?と思われる伏線は実はちらほらとあって。
…というのも、もう削除したしスクショも残ってないけれど、この7月の流れの中で、だんなちゃんのラインや留守電にも「おとうさんは、あれから車の運転はしていません」だの「まことは、お父さんに運転をするな、というてたけど〜」みたいな匂わせだけのメッセージがウニ男さん自身から何度も入ってたんだよね。
なるほど それもあって必死に連絡をとろうとしてたんか、と。
今回は、この結果に至るまでの道のりの話。このお方が、どれだけ頑なに免許を手放さなかったか。ただ、最初に白状しておくと——この記事には、正確な日付がないんだよね。途中に出てくる事故が「いつ」だったのか、「何に」ぶつかったのか、「車」はどうなったのか、など実は書けてない。なぜ書けないのか、その理由ごと記録します。
不死鳥の男
まず、ウニ男さんという人の身体の歴史から。この方、何度も倒れ、何度も死にかけ、病院のベッドはいつも集中治療室。そのたびに死の淵から不死鳥のように蘇ってくる人です。
脳幹梗塞で倒れて家の階段から転げ落ちたり(このとき、すそこ様が病院の待合から「おとうさんがぁ! お父さんが!!!」と泣き叫びながら電話をかけてきた回は→こちら)。ゴルフの打ちっぱなし場では数段の外階段から転げ落ちて入院、一時はほぼ寝たきり。結構な大掛かりな足の手術も、複数回。こういうことが、しょっちゅうある舅なんです。
そして、ここが今日の本題につながるんだけど——ウニ男さんは、元タクシー運転手。しかも、80歳を過ぎても現役で乗務していた人。倒れるまでは、運転のプロとして働いていたから運転への自信は、人一倍どころじゃすまない人だったんだよね。
病名は、教えてもらえない
で、これだけの病歴がある人の医療情報が、わたしたちにどう届くかというと——全く届かない。(-_-;)ナゼ?
すそこ様は、詳しい病名や診断内容を、聞いてもあやふやにして教えてくれないんです。悪意というより、たぶんご本人にも正確にはわかっていないのもあるし、曖昧にしといた方が都合いいのかもしれんしね。まぁ…代わりに届くのは、感情だけ。おなじみの感情圧ね。

お父さんは、長年ずっと立って働いてきて、それでこんなことになってしもうたと、おかあさんは思いよるんよ。ほんまに よぅ働いてくれたから
……勝手に診断が下りてますけど。腰の話なのか足の話なのかも、聞くたびに混ざるのも謎。
要するに、あの家から届く医療情報は、カルテじゃなくて感情圧なのよね。
そしてその目的は、情報共有ではなくて、家族に心配かけるから黙っているわけでもなくて、心配してほしい。構ってほしい。電話をしてこい。——それだけなのよね。
実際にあるやりとりはこんな感じ。すそこ様が例によって大袈裟に、
「お父さんはほんまに大変な、ややこしい病気になってしもうて」と語り始めたので、わたしが「お父さんって、脊柱管狭窄症じゃないんですか?」と聞くと、
「そんな名前じゃったような気も、するけど、 おかあさんはようわからんのよ」

……軽っ。そして、わからんのかーい。
そして話は、何事もなかったかのように続いていくから。
「でもなぁ、ほんまにこんな病気になってしもうたんも、ずっと長いこと家族のために立ちっぱなしでなぁ。だからこんな目にあってしもうて」。
いやいや。心の中で私は毒づきまくり。もちろん長年の立ち仕事も要因のひとつかもしれないけど、この病気、高齢の男性には全然珍しくない、むしろよくある病気で、主な原因は加齢だかんね?!
おわかりでしょうか。あの人にとって、病名は、どうでもいいってことが。
大事なのは「家族のために犠牲になった夫」という物語のほう。
正確な診断名は、物語の邪魔にしかならない。だから「そんな名前じゃったような気もするなぁ」で流れるんだろうな。
ラボの推定:おそらく、重度の脊柱管狭窄症
それでも、私は断片をそっと拾いまくる。長年、耳にしたポイントを集約すると、こんなところかな
- 腰から足にかけて、痺れる
- 長く歩くと痛みが出てくる
- 前屈みになると楽になって、また歩ける
- ひどい時は、仰向けでベッドに寝ていても辛い
整形外科と脳外科で医療事務をしていたわたしの経験(診療室に入って、ドクターの隣に座ってました)からいうと この症状の並び——おそらく、重度の脊柱管狭窄症かな、と。
※当ラボの推定であって、診断ではありません。ただ、素人の当てずっぽうでもないし、先ほどの「そんな名前じゃったような気もするなぁ」で、答え合わせはほぼ済んでるかと。あと、お得意の拾い物で、しれっと置いてあったりする病院の診療情報とか、書類とかね。
もろもろで総合的に推察してます。
ちなみに、わたしにこの手の知識があるとわかってから、すそこ様の「感情圧による医療語り」は、わたしに対しては減ってる気がするんだよね。感情圧が効かない相手には撃たないという、あの方の砲撃管制がすごすぎる。
だから、言い続けてきた
腰から足が痺れる。痛みがいつどのタイミングで来るか、わからない。——その足で、ブレーキを踏むんだよ?
だからわたしたちは、遥か昔から言い続けてるんだよね。
「ウニ男さんには、絶対に運転をさせないでください」。
すそこ様の免許問題(→【激突】の回)が始まるより、ずっと前から、遥か昔から言い続けてる。
でも、まったく通じない。
そりゃ、わかるよ。相手は元タクシー運転手。運転でお金を稼いでいた人に、「運転をやめて」は——たぶん、人生を否定される言葉に聞こえていたはずだからね。
プロの誇りに、正論は刺さらないってわかってはいるけど、
でもね、逆に プロだったからこそ話が通じるってはじめは信じていたの。こんな足の状況で乗るべきではない。ちゃんとけじめをつけて返納しなくちゃいけない。世の中の見本となるためにも、って思ってくれて動いてくれるんじゃないか、そう期待してた部分も最初はあったから。
はい。勿論 そんな淡い期待を抱いたこっちがバカでした。期待できるような人じゃないことも薄々わかっていたのに。
そして事故は、伝聞形で届いた
ある時、すそこ様が、会話の流れでさらっと言ったことが、ウニ男さんへ執拗に返納を迫る私たちにとって追い風となる。

おとうさんは、もう運転をしとらんのよ。この前、事故をしよってから、私がもう運転をさせないようにしとるんよ。だから、心配せんでも絶対に乗させることは絶対にしない
……事故「しよってから」?? 初耳なんですけど??
聞かされた断片をつなぐと、突然の痛みと足の痺れでブレーキがうまく踏めず、電柱だか、家の塀だか、何かしらにぶつけた——らしい。らしい、としか書けない。いつなのか、人や車、物の被害はどうだったのか。すべて、すそこ様経由の伝聞によるもので、詳細は今も不明のままだから。
あの家では、ほんと…に毎回 事故は、事後の伝聞形で届くよね〜…(-_-;)
「もう運転しとらん」を、信じられなかった

私がもう運転をさせないようにしとる
——この宣言を勿論 私たちは額面どおりには受け取らない。
なんっっっども裏切られているし、そもそも免許は手放していない。車はある。本人の運転への自信は健在。気持ちは今も現役。そして検証する手段は、こちらにない。
なにしろこの方、まだその時はタクシー運転手で、症状もそこまで重度ではないものの、自他共に足が悪いと承知してる状況で平気でハンドルを握って、こちらまでやって来ていた実績もあるんでね(→この回やこの回)。
その後の年末帰省でも、すそこ様は「お父さんは運転はしとらんのよ」と言いながら、「乗る時には隣に私が乗るから大丈夫なんよ」「暗くなったら運転しないし」と続けて、わたしたちを夜にホテルまで車で送ると言い出してるしね(→この回)。……してるな、これは。
「わしが運転すればええじゃろ」というウニ男さんの発言。どれだけ聞かされてきたことか。
だから【激突】の回で、わたしはこう書いているんだよね。「ウニ男も返納を拒否(多分、こっそり乗ってる)」と。
最後の砦は、「身分証明書」だった
私たちが散々言い続けても頑なに身分証明書がいる!! だから返納できんのじゃ!!!と近年はそれ一辺倒で戦ってきたウニ男さん。
ここで、ずっと謎だったことの答え合わせをさせてください。
ウニ男さん、今回もベッドの上から叫んでいたんだよね。「身分証明書がなくなるから、返せれんのじゃ!!」(→第8話)。あまりのこだわりぶりに、つい「身分証明書を使う場面が、おとうさんにあるんですか? あんまり使わないと思うんですけど」というと、

銀行とかで、いるんじゃ!!!
…なるほどね。一瞬、「え、なんで?」と思ったけれど、でも、すぐにつながった。——すそこ様は最近、通帳や印鑑を、なくしている。そして、あの家の財産は、ほとんどウニ男さん名義(この世代には、よくある形です)。つまり、なくすたびに、再発行だ何だで、銀行で、本人確認が必要だったわけか、と。
実害が、すでに出てた。ウニ男さんの身分証明書は日常的に必要だった。
だけど、もちろん そうであるならば余計にこのままでは更なる実害が及んじゃうんでね。問題の芽は小さいうちに摘んどきましょ。
すそこ様の「お父さんはほんまに車には乗っとらんのよ。次回の更新はさせないから」という援護射撃も空砲です。

期限が切れたら、それは身分証明書にならないんです。
身分証明書が必要なために持っているのであれば、意味ないですよ。
返納をすれば「運転免許経歴証明書」が貰えるので、それで身分証の代わりになります。それかマイナンバーですね。
私の言い逃れができない詰めようにウニ男さんは面白くない。
※同じ「身分証明書がいる!」で止まっているご家族へ。返納時に申請できる「運転免許経歴証明書は、顔写真付きの公的な本人確認書類として使えます(詳細はお近くの警察・免許センターで)。返納拒否の最後の砦はだいたいこれなので、この一枚の存在を伝えるだけで、砦がひとつ崩れちゃいます。
そんなやりとりをしてたところ、まさかのマイナンバーつくる発言で参戦のカツオくん。
(そう。第11話の「マイナンバーの手続き予定」の種は、実はこの会話でした)
結局、何がウニ男さんを動かしたのか、わからないけれど、やっぱり私のお父さんじゃないけど、何らかのその人個人個人の何かきっかけがあるんだろうね。
親父は免許返納済み
カツオくんの事務連絡の一行が、すべてです。でも、この道のりとかは本当にどうでもいい。
人は、変われる。あの人でも。——
今回ばかりは綺麗にまとめさせてください m(_ _)m
【追記】
返納の話を、もうひとつ。うちの実父は、揉めずに、納得して、手放せた側です。
同じ「免許を手放す」が、家によってどれだけ違う道のりになるか。あちらは、警察署で敬礼をもらう話です。
→ 警察署で、父は敬礼された。——認知症の父が納得して免許返納できた『主治医作戦』
