第7話:作戦、全滅。—―帰省の計画書、答え合わせの回
2026年の年末年始帰省の話はここからが本編。
去年の11月末、わたしはこのブログで作戦計画書を公開してました。
舅ウニ男さんの免許返納と施設入所という2大ミッションを、”既定路線として淡々と”進める計画。だんなちゃんの想定問答集まで用意した、われながらの力作。
あの記事の最後に、未来予測としてわたしはこう書いてもいる・・
「もちろん、こうすんなりとうまくいかないこともわかってはいるけど」
はい。
今日はその、答え合わせの回です。じゃーん。
先に結果だけ言っておくと——作戦は、全滅してます。
でも、うまくいかなかった方向が、まさかの斜め上なのさ。
例によって、これはわたしから見た景色の記録です。
第0手|交通手段は、教えない
実は計画書にも書かなかった手を、今回の作戦にひとつ組み込んだのです。
それは、今回の帰省ではわたしたちは新幹線で帰るのか車で帰るのかを、あえて伝えない ということ。
理由その1。
伝えると「何時に着くん? 今はどこにいるん? こっちにも準備がいるんじゃから聞いてるんよ」と、GPSのように現在位置を求める追跡が始まるから。
理由その2
こちらのほうが本命。
いつもは新幹線一択のわたしたち(もう長距離運転がしんどいお年頃)。
でも新幹線で帰ると、泊まるホテルまでの距離が義実家からは微妙に遠い。それでも自分たちでバスや電車を使ってホテルまで戻ろうとしても、「おかあさんの車で行きなさい」「ホテルまで送る」が発動して、断っても断っても、きかない。

……あのぉ
免許返納をお願いしてる相手に、送ってもらうんですか?
しかも数分前に「暗くなったら運転しない」って言ったその口で、夜、ホテルまで送ると言い出してくるからね(このへんの矛盾は計画書にも書いたとおり)。
ていうか… そもそもの話。一応 建前上は、泊まるとすそこ様が準備等で大変になるから迷惑をかけたくないからホテルに泊まる体裁をとってるのに、これじゃあ 本末転倒だっつーの。
それで じゃあ、おかんの車を借りていい? という流れにいつもなるんだけど——それも変な話でしょ?返納をお願いする側が、その車をあてにするのは、筋が通らない。
だから今回は、一切頼らない状況を最初から作ることにしたというわけ。
自分たちの車で帰省する、ってね。
本当は雪予報で、帰るのをやめようかとも思ったんだけど。GWもお盆も帰ってないから(帰らなかった経緯はすそこ砲の回参照)、さすがに正月まで帰らないとなったら、乗り込み&毎日着信で呪われそうな気配しかなかったので、腹をくくって出発。
高速で4時間の距離を、休憩に休憩を重ねて10時間かけて、夕方に到着しました。 ふぅ しんど(;´д`)
もうこの時点でわたしたち、わりと いやいやかなりの満身創痍です。
で、到着するなり。

なんで車で帰ってきよったん? いつもは新幹線じゃろうが
だんなちゃん、ここで静かに第一撃。

「いや。だからおかんに車をやめてほしいって俺らは言ってるのに、おかんの車を借りるのは筋が違うと思って。それで自分たちの車で来たんだよ」
10時間の運転が、そのまま説得力になった瞬間です。
そこから、話を詰めていくことに。
答え合わせ①|既定路線作戦、不発
さて、計画書のおさらいです。
- だんなちゃんがウニ男さんを散歩に連れ出し、2人きりで話す
- すそこ様は戦場から隔離。わたしは”感情暴風”の防波堤
- 話題は免許返納から、施設へ自然に導線
- お願いではなく”既定路線として淡々と”
結果。
ひとつも実行できませんでした。笑(~_~;)
机上の空論というやつですな。連れ出しも隔離も導線も、現場に着いたら発動する隙がない。
ただ、「絶対に言うぞ!!!」の意志だけは固く決めてたので、作戦が使えないならと、逆に直球でいきました。
帰省してきた息子夫婦と、おそらく楽しく家族ごっこをしたかったであろう空気の中へ、だんなちゃんが一言。

「それはそうと、先に話があるんだけど」
ぶっこみました。淡々と流す予定が、正面突破です。
すそこ様とウニ男さんは、あからさまに面白くない顔。素知らぬ顔。
ところが。ここで想定外が起きる!
答え合わせ②|「期待できない応援団」が、前のめり
計画書でわたしは、カツオくんをこう書いてたんだよね~…
「期待できない応援団」。ついでに「狂気の義兄」とも。
そのカツオくんが——誰よりも前のめりでした。
わたしが繰り出す情報(父の介護で得た知識の在庫があります→第2話)に、パクパクと食いついてくる。聞きたくてしょうがない。話したくてしょうがない様子で。
……なんで?
その理由は、カツオくん自身の口から語られるんだけど、すそこ様が、その場にいる前で。
隠すことなく。
「今は5月か? 何月かいのー?」

「おかんの状態は特に問題はないんやけど、ただなぁ。この前、おかんが、今月は何月やったかなぁ?みたいな……本当は12月なのに、『今は5月か? 何月かいのー?』っていきなり言いよったんよ。
その言い方が……俺らでもよぅあるじゃろ、今月が何月かわからんようになること。だけど、そんなんじゃないんよ。ほんまに、今が季節も何もかも、わからんようになってしもうた感じで。ほんまにびっくりしたんよ。
こんなことは今まで一度もなかったし、はじめてのことだったから、かかりつけの病院にすぐに連れていきよったんよ。先生は特に問題はないっていいよったんじゃけどな」
すそこ様は、隣で黙っていました。
「オーバーに言いよるなぁ」とでも言いたげな、他人事みたいな顔で。珍しく、口を挟むこともなく。
わたしは以前、あったなぁ~経の回に書いたと思うけど
「過去にしか住めない人は、今を失っていくことに気づいてない」。
あのときは、比喩のつもりで書いた言葉だったけど、まさかの
それが、症状になって帰ってきた。
12月に、季節がわからなくなる。
病院の先生が「特に問題はない」と言っても、カツオくんの語尾に残った「……じゃけどな」が、すべてを物語ってるなぁ~・・と。
答え合わせ③|12月の、あの謎着信の正体
ここで、思い出してほしい記事があって
「平日の昼間に電話をかけてくる義家族の正体」と、その続編。
12月の平日昼間、カツオくんから初めての着信。留守電なし、LINEなし。わたしはあれを「年末に帰ってくるんか!?の圧」、つまりパワーゲームだと解釈してたんだよね。
答え合わせをすると・・
そう
あの電話は、この報告をしたかった電話だったのでした。

やっっべ
そうだったん?!
母親の見当識障害を目の当たりにして、仕事を休んで病院に連れて行って、混乱の極みにいた男が、弟に伝えようとかけてきたSOS電話。それがあの、留守電もLINEもない謎着信の正体だったのよ。
言い訳をさせてもらうと、こちらの読みにも理由はあって、時期はちょうど、すそこ様の三連続着信(すそこ砲)と同じ頃というか、まさにその直後。
これまでの実績から「追い詰めるための援護着信」と読むのが定石だったからね。
まさかまさか、そんな事情があったなんて(-_-;)と私は顔面蒼白( ;∀;)
やばやばやばやば〜……
当ラボの統計的には正解率の高い賭けではあったんだけど、まさかまさかでした。
しかも「仕事で出られないから、用件はLINEで送ってくれると助かる」とメッセージを送ったのに、無視してまた着信だったから、決めつけちゃったんだよね、、、
で、その時にカツオくんが

そういえばなぁ 聞きたいことがあったんじゃけど

え?

わしが電話したときがあったじゃろう?
そのことを伝えようと電話をしよったんじゃけど、
なんで折り返し連絡をくれんかったん?

💧💧 (やば・・・)
え? (だんなちゃんと顔を見合わせて)確かラインを送ってるよね? え? 入ってない?

いや~・・ 入ってなかったと思うんじゃけど
なんか、ラインが開けんかったんよ
確認してみてくれる?と見てもらったら——

あれ、あの時はみれんかったのに……あぁ、ほんまじゃ。はいっとるわ

はぁ~・・・・ よかったぁぁぁ・・・
本当に見えていなかったのか、見る余裕がなかったのか。そこの事実はわからない。
ただ、あの取り乱し方と、仕事を休んで病院に連れて行っていたことを考えると——まぁ、あり得る話ではあったのかな、と。
カツオくんは、認知症の知識がなかったからね。どういう症状が出て、どう進んでいくのか、今までは現実から目を背けて知ろうともしてこなかった。だから今までは「同じことを何回も聞くなぁ」「物を探してばかりいるなぁ」くらいにしか、見えていなかったんだよね。
その人が、初めて認知症の顔を正面から見たんだもん。
初めて「やばい」と現実を受け入れた第一歩だった訳だから、そりゃ正気じゃいられなくなるよね。気持ちは痛いほどわかる。
あの謎着信は、必死に助けを求めて鳴らしてたんだなぁ、、
あの記事の締めに、わたしは「セオリーが通じない義家族に来年も振り回されそう」と書いたけど、振り回されたのは合ってた。ただし、思ってたのとは全然違う方向でした。
採点結果
というわけで、11月の作戦計画書、答え合わせの結果です。
- 既定路線作戦 → 不発。直球に変更
- 連れ出し・隔離・導線 → すべて未遂
- わたし=から揚げ係 → 係ごと消滅(→第6話:詰め係、卒業)
- カツオくん=期待できない応援団 → まさかの前のめり
- 12月の謎着信=パワーゲーム ではなく→ 報告の電話でした
で、肝心の2大ミッション——免許返納と施設入所——はどうなったのか。
その戦いの記録は、次回以降に。先に言っておくと、ウニ男さんはベッドの上から、あの家で数年ぶりに聞く「正確な発言」を叫ぶことになります。
ただ——この帰省でいちばんの想定外は、作戦のどの項目でもありませんでした。
計画書に書いた勝ち筋も、負け筋も、ぜんぶ飛び越えて。
認知症のフェーズが一段進んだ「今は5月か?何月かいのー?」-見当識障害が、待っていた。
ここから、この家の2026年が始まります。
(つづく)
