実家に帰らないって、俺が決めた。(三部作シリーズ②)

〜まさかの夫、覚醒するの巻〜
それは、子宮筋腫作戦の“副作用”だった。
あの名作戦――
**「子宮筋腫を理由に帰省を静かに断る」**という、
前代未聞のフェードアウト型ディフェンス術。まさに攻撃は最大の防御なり、よ。

義母・すそこからの激怒LINEも、電話も、罪悪感の洪水も、
いっさい発動せず。
まるで、何事もなかったかのように時は過ぎ――
(実際は、触れたくない話題としてスルーされただけだけど)
…その静寂の裏側で、
ひとりの男が、静かに覚醒しちゃってた。
「夫よ、君は今まで何を見ていたのか問題」
まことくん(夫)は、基本的に
**“実家のことに深入りしたくないマン”**
- 母・すそこの強さ(というか情圧)には逆らえない
- 兄・カツオのモラ感にも口を挟まない
- そして「なんか俺が言っても変わらんし」っていう、伝家の宝刀スルー
いわば、
**「現実は直視せず、嫁が折れて終わるスタイル」**でこれまでやってきた男。
わたし、洗脳…じゃなくて事実の説明を始めます。
でね、すそこからわたしのLINEがスルーされたあたりから、
わたしはまことくんに“静かに圧”をかけ始めました。
- これがどういう意味のスルーなのか
- 今まで、帰省の話を出しただけでどれだけ怒鳴られてきたか
- すそこのLINEスルーは“悪意なき無視”ではなく、“意図的な沈黙”であること
…などなど、
あの「まことくんに伝えたいこと」シリーズの手書き資料を駆使して、地道にプレゼン開始。
嫁、情報屋になる。
わたしのプレゼンは、ただの愚痴や悪口にならないように、感情的にならないようにできるだけ冷静に、事実だけを伝えるように配慮しながらすすめていく。

「これ見て。すそこからのこのLINE、どう読める?」
「ここ、ちょっと“圧”入ってると思わない?」
「で、まことくんが返したLINEには、何も触れてないよね?」
…という、
**感情と構造をセットで伝える“姑語翻訳講座”**が展開されるわけですよ。
まことくん、最初は「まぁ、親だから…」とか言ってたけど、
徐々に、「確かに…これはないな」って顔が変わってきた。
そして、ついに――
「俺、はっきり言うよ。」
あの瞬間を、わたしは一生忘れないと思う。
まことくん、ふっとため息をついたあとに、こう言った。

「俺、はっきり言うよ。
親父が施設に入るまでは、実家に帰らない。
そうまでしないと、何も変わらない。」
…。
…え、マジで!?!?!?!?
(心の中では、鐘鳴らしてた)
夫が「自分の言葉」で決めたこと
まことくんのこの発言、
文字数にしたら短いけど、意味としては長編小説レベル。
だって彼は、
これまで実家のことを自分の意思で何かを「決めた」と口にしたことがなかったから。
- 義母の言うことに基本NOは言わない
- 兄の理不尽も受け流す
- 嫁の不満も、なんとか“なかったこと”にしてきた
そんな男が、
“帰らない”って言ったの。
しかも、“俺が決めた”って言ったの。
「覚醒」って、こういうことなんじゃないかって思った。
別に、家族と絶縁するとか
バチバチに言い返すとか、そういうことじゃなくて。
「自分で決める」「自分の立場を持つ」ってことこそが、
本当の意味での“家族との距離の取り方”なんじゃないかと。
わたしがずっと願ってたのは、
まことくんが「わたしの味方になる」ことじゃなくて、
「自分の言葉を持ってくれること」だったんだよね。
実際には、現実はそう簡単じゃないこともわかってる。
それでも、これはすごくすごく大きな一歩だと思う。
覚醒ログ、保存完了。
- 手書きプレゼンは地味だけど効く
- すそこの沈黙は、思考停止ではなく“操作の一手”
- スルーされても、言葉で伝え続ける価値はある
名言ログ
「俺、親父が施設に入るまでは、帰らん。」
…その一言に、10年分の葛藤が詰まってた。
【次回予告】
姑語翻訳編へ続く――
「“帰ってこんでいい”は、“見なかったことにしたい”の意」